フロアレイアウト敷設責任者心得

現物合わせではなく、予め線路配線図を作成しておき、当日その通りに組み上げる場合の心得です。まあ、心得という名前の通り、書き方は命令口調です。

計画を立てることのメリット

スペースに余裕があり、レールの数や種類にも余裕がある場合などでは、当日に適当に机を並べてということでも大丈夫だろう。しかし、限られたスペースの中に、できる限りの車両を留置し、かつ安全に走行できる間隔で線路を敷くとなると、現物合わせでは試せる回数には限度がある。

机上(PC上)で試せる数は膨大である。現物合わせでこんな回数試行錯誤する人がいるだろうか?

写真では811系4両×3編成の12両が、カーブした部分も使って留置されている。このヤードは直線部分は標準複線間隔程度になっているが、カーブの途中から留置できるよう、有効長ができるだけ長くなるように試行錯誤した。現物合わせでは、間隔を密にした上でカーブしたところから留置できるようにするのは無理だろう。机上(PC上)でかなりの数の試行錯誤を繰り返してでなければ作ることはできない。

当日までに説明を行うこと

レールの規格について説明を行うこと。最低でも、レールの名前の付け方は理解してもらうこと。例えば、直線レールはストレートのSの後に長さを書いて、S280というレールが280mmであることなど。また曲線レールでは、カーブのCかradius(半径)のRの後に、半径とハイフンの後に角度で、C280-45とかR282-45といったこと。それから複線のレールでは、ダブルの頭文字のDかダブルそのもののWが、直線や曲線の規格名の中に入っていることも説明する。それから、ポイント付帯直線レールについて、長さが似通ったレールがあることを説明しておくこと。S70とS72.5、S62とS64のことである。長さがぱっと見ただけでは違いがわからないレールがあることを、必ず見せておくように。

高架レールについて、配置図に書いた名前と書き方と、実物を見せて、対応をつけてもらう。橋脚の種類や使い分け、また番号の表示位置なども説明する。配置図で、どの書き方の橋脚が、どのタイプの橋脚に対応するかも説明する。例えば、□mmと書いてあるものはレンガ橋脚で、数字だけは単線橋脚、○の中に数字は複線橋脚といった話である。

TOMIXのレールを使う場合は、ファイントラック、グレーや茶色のもの、ステンレスのもの、この3種類があることを、実物を見せて説明すること。本線はファイントラック優先とか、ステンレスのはヤードの末端のレールが足りない場合にだけ使うといったことを説明する。

またポイントは、ネクストネオシリーズ以降と、それより前のもので、レバーと転換方向が違う(逆になっている)のを実際に見せた上で、区別して、それぞれ別々の場所にかためて配置するようにレイアウトプランを作っていることも説明する。

レールの接続・分割方法について、一度実演すること。KATOレール保有者が、TOMIXレールを真っ直ぐ抜かずに何本も破損させるという事例もある。高架やホームについても、2大メーカーで勝手が違うことは言っておいた方がよい。

当日までに準備すること

予め、どの場所からレールを敷いていくか、決めておくこと。同じ長さのレールが等間隔で並ぶところがよい。TOMIXではワイドPCレールで間隔や位置が絶対にずれないかたちにするのがよい。KATOでは複線レールを互い違いにするとよい。

TOP画像にも使っている2010年の学祭のレイアウトプラン図。中央の赤で囲んでいる部分が、ワイドPCレールで、3つの複線エンドレスをきっちり固定している部分。

KATOのユニトラックで複々線の場合の基準の例。このように複線レールを互い違いに繋げば、ずれることはなくなる。

印刷したレイアウトプラン図は、必ず貼り合わせること。ばらばらでは本人以外には全く理解できないどころか、本人も混乱し、収拾が付かなくなる。全部をひと繋ぎにしたものは、最低でも2つは用意せよ。片方は自分専用にして、もう片方を他の人に使わせよ。また、部分部分の配線図も用意せよ。例えば、日の字形のエンドレスの場合、外側4辺と中央の部分だけのものを用意せよ。また、小さいエンドレスなどがあれば、それも用意せよ。

印刷範囲の分割の例。外周を4辺に分けたものと、中央部分で、縦に赤色部分2つと、横に青色部分が3つ。そして小さいエンドレスのものが、右下のピンクと右上の黄緑の部分。

印刷は、貼り合わせるために同じ部分が重なるように印刷し、余白と目印に注意すること。紙を貼り合わせるときは、曲線で切る。目印になる繋ぎ目などを斜めにぐねぐねに横断し、複数の目印でずれないようにせよ。大きな全体のを作る場合は、特に重要である。また糊で貼り付ける場合は、特にしわのできにくいスティック糊、トンボ鉛筆の「しわなしPiT」を使うのがよい。

目印がわかるような切り方の例。部分部分用で貼り合わせはいいかげんだが、切り方は、このようにあちこちを斜めに横断するのがよい。

当日すること

ヤード等をこれ以上並べられないくらいに密な配線にしていてかつ、机の端からのレールの距離や、机の番号札を避けたり、机の角の丸くなっている部分を避けるなど、片方の端でもうちょっとレールを机の内側にとずらすと反対側で机の端との距離が狭くなって困るような、ぎりぎりで綱渡りするようなレイアウトプランの場合、机がきちんと並んでいないことは致命的である。まず、机を隙間なく、斜めになることなく、真っ直ぐにきれいに並べることについて、他人任せには絶対にしないこと。どれだけ時間がおしていようが、全部を自分で、全責任において、きれいに並べること。このことを未経験者に理解・納得させることは困難極まりない。そんな時間がかかり過ぎる上、実際に問題のある状況を目の当たりにする以外に納得させることのできないことはしないこと。結局は時間の無駄であり、自分で全部する以外に方法はない。なお、机の脚のネジ等による高さの調整なら、他の人に任せても大丈夫である。

レールを繋ぐ時は、まず基準になる場所を自分で作ってから、他の人にも繋いでいってもらうこと。一番レール繋ぎが煩雑な部分を自分でやりながら、よくわかっている経験者と、よくわかっていない未経験の人を動かし、また、よくわかっているかどうかに関わらず、他の人が繋いだ部分が図の通りになっているかどうかをチェックしながら繋いでいく。

配線図を見て線路を繋いでフロア運転会をした経験のない人には、配置図を見て理解できていない前提で指示をすること。これはわかっていない人に対しては絶対である。(よくわかっている人に対しては、「図のこの部分から先を作って。」といった指示でよい。)

例えば、一番わかっていない人には、基本となる直線レールを必要本数持って行って、「ここに複線で、このレールを○本ずつ繋いで。」といったかたちで指示をする。少しわかってきたら、長さの違う3種類のレールを2本ずつ持って行き、「この複線の先の部分が図のこの部分で(ここできちんと指で図を指してどの部分かわかるようにして)、このレールの先に繋がる3種類の長さの違うレールを持ってきたから、この図の順番に繋いで。」といったかたちでレベルアップしていってもらうのがよい。(2本では長さの長短が一目瞭然なので、図のレールの型番を見るところまでは行かない。なので最低でも3本で始め、次第に本数を増やすやり方がよい。)

また複線のカーブでは、45°の内側のレールと外側のレールを2本ずつ持って行き、「ここからカーブしてこっちに90°曲がるから、外側と内側と半径の違う45°のが2本ずつだから、ここに繋いで。」といったかたちがよい。どちらが内側でどちらが外側かは教えない。実際に半径の違うレールを並べたり重ねたり自分で見て確認させるのが、カーブレールの理解は早くできる。一旦このレベルを通過すれば、この人にはカーブは簡単に任せることができるようになる。もし内外の区別について訊かれたら、「自分で並べたり重ねたりするとわかるよ。」などと答えればよい。

図を見るのに慣れたら、レールをケースから取って来るところをやってもらという順になる。「このカーブの先が図のこの部分で、」(図を指して声を出して数えながら、)「基本となる直線レールが1、2、3、・・・5本ずつだから、あの一番長いレールを10本取って来てここに繋いで。」といったかたちで、レールを取って来るところもやってもらう。まずは基本となる一番長い直線レールを取って来てもらうところから始めるのがよい。

わかっていない人に対しては、レールを取って持って行って説明して繋いでもらわないとどうにもならないことは、高校2年の文化祭の時に顧問の先生に口うるさく言われて始めたことだったが、これは絶対に必要なことであった。私が入って1年生がレイアウトプラン図を作った前年は、私以外の全員が先輩で経験者なので各自でどんどん繋いでいったが、未経験者にはそのようなことは無理である。私が入るまで、過去6回の運転会でレイアウトプランを設計し、生徒に指示を出していたのだから、どのように指示を出さないといけないかはよくわかってらっしゃった。初めての人に対しては、本当に、レールを持って行って指示通りに繋いでもらうところから始めないと、全く何をしていいかわからず、何もできなくない状態におちいっていた。指示は、細かいところまで具体的にでないといけない。そしてこういったやり方をするようになってからは、それでずっと通用している。